【弁護士が対応】福岡・天神で借金問題(債務整理)の相談は弁護士法人米盛法律事務所に > 債務整理コラム > 法人破産における代表者の役割とは? 破産についての説明義務や代表者の責任について

破産は、個人も法人もすることができます。このうち特に後者は「法人破産」と呼ばれます。法人とそこに属する役員などの個人は、形式上別人格ですが、会社の代表者は当該法人について大きな権限を持っており、破産においても特定の役割を担います。

 

具体的に、代表者にはどのような役割があるのでしょうか。

当記事では、法人破産における代表者の役割について説明するとともに、義務や責任についても言及していきます。

  

 

法人破産における代表者とは

まずは「代表者」とは何かについて整理しておきます。

 

「社長」や「会長」などの肩書が付されるケースもありますが、これらの肩書は法人破産において重大ではありません。

ポイントは実質的な権限の有無や、適法な手続により選任された取締役であるかどうか、といった点にあります。

 

代表者は必ずしも1人ではありません。取締役が複数人いることもありますし、社長や会長などの特別な肩書が与えられていなくても、法人破産においては代表者として扱われることがあります。

 

法人破産における代表者の役割・権限

法人破産に関して代表者が担う役割、権限について紹介していきます。

 

法人破産の意思決定

まずは「法人破産をしよう」との意思決定を始めるところからです。

 

会社の意思決定権は、原則として社員が持ちます。株式会社の場合、社員は株主のこと(≠従業員)であり、株主総会の決議が意思決定機関であると説明できます。ただ、あらゆる事項が株主総会により決まるわけではありません。

株主に逐一確認を取ることなく、所定の事項については、取締役・取締役会が意思決定を下せます。

 

法人破産に関する意思決定もその1つです。株主総会で決定の判断を下す必要はなく、取締役や取締役会が判断を下します。

 

もし取締役が1人の場合、当該人物が会社の代表でるため、法人破産の意思決定を下すことができます。

 

取締役が複数人いるときは、個別に取締役の同意を得るか、取締役会が設置されているならそこで全会一致の承認を得る必要があります。

 

この意思決定が、法人破産における代表者の役割・権限の1つです

 

破産手続開始の申立て

法人の代表者には、破産手続開始の申立て権限が与えられています。

 

(法人の破産手続開始の申立て)
第十九条 次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
一 一般社団法人又は一般財団法人 理事
二 株式会社又は相互会社 取締役
三 合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員

引用:e-Gov法令検索 破産法第19条第1

 

一般社団法人や一般財団法人においては「理事」。株式会社や相互会社においては「取締役」。

合名会社、合資会社、合同会社においては「業務を執行する社員」が申立ての役割を担っています。

 

なお、これらの申立権者は、申立てに際して破産手続開始の原因があること(法人破産の要件を満たしていること)を疎明しないといけません。

※申立権者の全員が申立てをするときを除く

 

破産に関する説明

破産法の次の条文では、法人の理事や取締役といった代表者、その他の人物に対して「説明義務」を課しています。

 

(破産者等の説明義務)
第四十条 次に掲げる者は、破産管財人若しくは第百四十四条第二項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第五号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
一 破産者
二 破産者の代理人
三 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
四 前号に掲げる者に準ずる者
五 破産者の従業者(第二号に掲げる者を除く。)

引用:e-Gov法令検索 破産法第40

 

法人破産の手続を開始するかどうかの判断、手続開始後の事案の処理に際して、裁判官や破産管財人が説明を求めてくることもあります。

そのとき、説明に対応しないと手続を進められません。そこで同条では説明義務を課しているのです。

 

説明義務については、これを拒んだときなどに備えてペナルティも同法で規定されています。説明義務者が同法の規定に反して説明を拒んだとき、または虚偽の説明をしたときは、「3年以下の懲役」か「300万円以下の罰金」に処すること、あるいはその両方を科すことが予定されています。

 

会社代表者等は、破産に関する説明をする役割を担っていることを自覚し、真摯に対応しないといけません。

 

説明を求められる最初の場面としては、債務者尋問が考えられます。破産手続開始の要件を満たしているかどうかの審査をするため、裁判官が直接尋問をするのです。これを求められたときは、裁判所に出頭して対応しないといけません。

 

破産手続開始後、裁判所から選任された破産管財人から面談を求められることもあります。破産管財人は会社財産の管理や処分などを職務とする人物で、財産や権利関係などの確認をするため、法人の代表者等に説明を求めることがあります。

 

なお、これら説明義務を果たす実効性を確保するため、破産法では取締役等に対する「居住の制限」や「引致」についても規定しています。
法人の理事や取締役、執行役、これらに準ずる者は、裁判所の許可を得てからでなければ居住地を離れることができません。

また、裁判所が必要と認めるときはこれらの人物を引致(連行)することも可能です。

 

債権者集会への対応

説明義務の一環として、債権者集会への対応も、会社代表者等は必要です。

 

債権者集会は、法人に対して債権を有する者に、現況等を説明するための場です。

裁判官、破産管財人、代理人弁護士(弁護士に依頼した場合)、債権者、そして代表者が出席します。

その場での説明が代表者の役割でもありますが、弁護士を代理人として選定しているときは、代わりに質問への応答もしてくれます。

 

債権者が一堂に会するケースは珍しく、少数の債権者、短時間の開催となっているのが実情です。

ただ、破産手続の状況により、3,4回程度開催されることもあります。

 

法人破産に対する代表者の責任

法人破産の手続に対する代表者の役割はいくつかあります。説明義務を果たし、円滑に破産手続が進むよう、協力する責任が代表者にはあります。

 

ただ、適法な破産手続を進めた結果生じた損失についてまで責任を負うことはありません。会社債権者は配当により債権の一部を回収することができますが、満額の弁済を受けられない可能性が高いです。そのとき、会社の代表者だからといって残債務を返済する必要はないということです。

 

そもそも代表者と法人は別人各であり、代表者は債務者ではありません。破産手続の終結により法人は消滅することになり、債務者がいなくなることで債務も消滅します。代表者が弁済の責任を負うのは、当該債務につき保証契約を交わしている場合に限られます。

 

取引に際して代表者個人が連帯保証人になるケースがありますが、このときは代表者個人が請求を受けることになるでしょう。

多額の債務が残っている場合、代表者も自己破産に追い込まれるリスクがあります。

 

また、合名会社の社員や合資会社の一部社員、その他無限責任を負う社員についても、法人に変わり債務の負担を負うことになります。