法人破産は、裁判所に申し立てをするだけでは終わりません。

その後破産管財人や裁判所の求めに応じて経営者の方等は会社財産の情報を開示し、また、債権者への説明も行う必要があります。

 

当記事では、破産手続開始決定を受けてから、破産手続の終結あるいは廃止の決定を受けるまでの流れについてまとめていきます。法人破産を検討している方は是非参考にしてください。

 

 

法人破産の終わり方

破産手続は、申し立てが受理されて即座に破産ができる(破産が完了する)わけではなく、破産手続を進行させないといけません。

 

また法人破産の場合は、自然人(法人などの団体ではなく“個人”のこと)とは異なり、法人格が消えることになります。

そのため個人のする破産とは結果が異なります。

 

「終結」と「廃止」がある

法人破産に限りませんが、破産手続が終わるパターンには大きく「終結」と「廃止」があります。

 

どちらも破産手続が終わることに違いはありませんが、その過程で“債権者に対する配当があるかどうか”に違いがあります。
また、廃止にはさらに3つの種類があります。

それぞれは下表のようにまとめることができます。

 

終結

(配当をして終了)

廃止(配当がなく終了)

同時廃止

異時廃止

同意廃止

債権者への配当が行われ、破産の目的を達成したときと判断されたときの終わり方

破産手続開始決定を下す時点で、債権者への配当等ができないことが明らかな場合の終わり方

破産手続の途中で、債権者への配当等ができないことが明らかな場合の終わり方

債権者のすべてが廃止に同意した場合などに認められる終わり方

 

なお、「令和3年司法統計年報」によると、自然人の破産者数は70,406、法人等の破産者数は5,915であることがわかっています。

参照:司法統計「令和3年司法統計年報 1民事・行政編」

 

終局区分別に見ると、終結は自然人が5,519(自然人のする破産の約7.8%)、法人等が1,595(法人破産の約27.0%)です。

 

法人破産の場合は、個人のする破産に比べて、終結により終わる割合が高いということがわかります。
また、法人破産の同時廃止に関しては総数が4,164で、廃止の種類別に整理すると以下のようになります。

 

  • 同時廃止:1
  • 異時廃止:4,162
  • 同意廃止:1

 

廃止となるケースでも、同時廃止や同意廃止になるのはレアであることがわかります。

 

法人は消滅する

法人破産のときは、その手続が終わることで法人格が消滅し、法人そのものが消えてなくなります。

自然人の場合は人がいなくなるわけではありませんので、この点が法人破産の特色であるといえるでしょう。

 

また、法人自体がなくなることに伴い、免責の手続を行うまでもなく会社に残った債務もなくなります。

自然人の場合だと、破産の申し立てとは別に免責手続の申し立てを要します。

 

破産手続開始決定を受けてからの流れ

弁護士への相談、書類や費用などの準備をし、地方裁判所への申し立てを経て破産手続開始決定が受けられます。

 

その後は次の流れに沿って手続が進行していきます。

 

  1. 破産管財人の選任
  2. 破産管財人との打ち合わせ
  3. 破産財団の処分(換価)
  4. 債権者集会の開催
  5. 債権者への配当
  6. 破産手続終結・廃止の決定
  7. 終結・廃止の登記

 

状況に応じて順番が前後したり省略されたりすることもありますが、おおむねこの手順で法人破産は進んでいきます。

 

破産管財人の選任

破産手続開始の決定と同時に、「破産管財人」を1人以上選任することが破産法にて規定されています。

 

(破産手続開始の決定と同時に定めるべき事項等)
第三十一条 裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、一人又は数人の破産管財人を選任し、かつ、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 破産債権の届出をすべき期間
二 破産者の財産状況を報告するために招集する債権者集会の期日
三 破産債権の調査をするための期間

引用:e-Gov法令検索 破産法第31条第1

 

破産管財人とは、破産者である法人の財産を管理し、必要に応じて処分等を行うことを職務とする人物のことです。
破産者の財産は「破産財団」となり、会社代表者であっても自由に処分することはできなくなります。

 

なお、この段階で破産手続の費用を賄うだけの破産財団がないことが明らかなら、同時廃止の決定が裁判所から下されます。

 

破産管財人との打ち合わせ

破産管財人の選任後、代表の方は破産管財人と今後の方針等についての打合せを行います。

 

破産管財人が説明を求められたときはこれに応じなければなりません。破産法で規定されている法的義務です。
また、「重要財産開示義務」についても法定されています。

破産手続開始決定後、所有する現金や不動産、有価証券、預貯金などの内容を記した書面を裁判所に提出しなければいけません。

 

なお、打ち合わせの際には、弁護士に同行してもらうことも可能です。

 

破産財団の処分(換価)

破産管財人は、破産財団の処分などによりこれを換価し、債権者への配当原資を確保します。

 

ただ税金など弁済が優先的に行われる債務もあります。

 

結果的に破産手続の過程で破産財団が不足することが明らかになったときは、裁判所が「異時廃止」の決定を下します。
その場合は債権者への配当などの手続は省略され、破産手続廃止決定、そして登記へと進むことになります。

 

債権者集会の開催

廃止されず手続が継続するとき、その後債権者集会が開催されます。

これは債権者に対して破産財団の換価状況や配当の見込みなどを説明するために設けられる場です。

 

債権者集会は破産財団の換価が完了するまで、複数回開催されることもあります。通常は、2,3ヶ月に1回のペースで開催されます。

 

期日には代表の方も呼び出されますが、ここでも弁護士に同席してもらうことは可能です。

 

債権者への配当

破産財団の換価処分終了後、破産管財人は債権者に対して配当を実行します。

 

配当可能額が1,000万円未満であるときなどには配当の手続を簡略化することも法的に認められています。

 

破産手続終結・廃止の決定

配当が完了して、破産管財人が職務を終えたことの報告をした後は、裁判所が破産手続“終結”決定を行います。

 

一方、手続の開始時点やその過程で同時廃止・異時廃止・同意廃止いずれかの要件を満たしたときは、裁判所が破産手続“廃止”決定を行います。

 

終結・廃止の登記

破産手続が終わったことの登記が行われます。
終結と廃止、どちらで破産手続が終わったとしても登記は必要です。

ただし、手続は裁判所のほうで進めてくれるため、代表の方などが別途手続を行う必要はありません。

 

そして破産手続の終結、あるいは廃止についての登記が完了することで、法人格は消滅。残債務についてもすべて消滅します。

 

申し立てから終結・廃止までの期間の相場

申し立てから終結・廃止までの期間は、状況により異なります。債権債務の額が大きい、債権者数が多い場合などには期間が長くなる傾向にあります。債権者集会の開催回数も増え、1年を超えることも珍しくありません。

 

破産手続の期間についても、公的なデータが公表されています。
参照:司法統計「令和3年司法統計年報 1民事・行政編」

 

司法統計によると、令和3年の破産既済事件数の総数76 ,321件に対して「6ヶ月以内は29,303件」「1年以内は9,336件」「2年以内は4,193件」「3年以内は561件」であると示されています。

 

6ヶ月以内がもっとも大きな割合を占めていますが、“終結”に絞ってみてみると、1年以内の3,340件がもっとも大きな割合を占めていました。
一方、“廃止”に絞ってみてみると当然ながら短い期間であるほど大きな割合を占めていることが示されています。

 

法人破産の場合は廃止とならない割合が比較的大きいことから、手続終了までの期間も長くなりやすいといえるでしょう。