住宅ローンや消費者金融からの借入など、さまざまな形で借金をすることがあります。
その後生活状況が変わって返済が滞ってしまったり、新たな借金で多重債務に陥ってしまったり、借金をめぐる問題に悩むこともあるでしょう。
借金の返済が苦しくなってきたとき、どう対応すれば良いのでしょうか。ここで覚えておきたいのは「債務整理」という手続です。
借金問題に困っている方に向けて、ここで債務整理についてわかりやすく説明していきます。
債務整理とは借金の負担を減らす手続
債務整理という手続を簡単に説明すると、「借金の負担を減らすための手続」であると表現できます。
返済が困難になった借金に関して、その残額を減らしてもらう・支払い時期の猶予をしてもらう・免除してもらうために行う手続です。
予定通り借金を返済できている方は債務整理に頼る必要はありません。しかし、急に職を失ってしまうこともあるでしょうし、病気にかかって働けなくなることもあります。事情は人それぞれですが、誰にでも借金返済が難しくなってしまうリスクは存在しているのです。
そのため「住宅ローンがまだ残っている」「消費者金融でお金を借りている」という方は債務整理のことを知っておき、万が一の事態が起こった場合でもすぐに対応できるよう備えておくことが望ましいです。
債務整理の種類
債務整理は、借金の負担を減らすために効果的な手続の総称です。そこでさらに細かく、次のように分類することができます。
債務整理の種類 | |
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任意整理 |
裁判所などを通さず、債権者との直接交渉により借金の負担を減らしてもらう手続。 債務者本人が交渉することも可能であるが、弁護士や司法書士に依頼して交渉してもらうのが一般的。 任意整理では利息分のカット、長期での分割返済などの結果が期待される。 借金の額が小さいとき、債権者の数が少ないときに適している。 |
特定調停 |
債務者と債権者の当事者間交渉を主軸に借金の負担軽減を目指すが、交渉の内容は裁判所を介して調整することになる手続。 弁護士や司法書士に依頼することなく解決が図れるが、相手方と合意に至らなければ問題は解決できない。 |
民事再生 |
再生計画を作成し、その内容を裁判所で認めてもらうことで、債務額の圧縮などを図る手続。 裁判所関与の下で進める手続であり、任意整理などに比べて条件も厳しい。 費用や時間もかかるが、借金の額が大きいときや債権者数が多い場合でも再起を図れる。 |
自己破産 |
借金を帳消しにする手続。返済の見込みがないときに利用する。裁判所から免責許可を受けることで借金から解放されるが、生きるための最低限の財産を残し、自宅や自動車などを失うリスクがある。 |
このように債務整理にもいくつかの選択肢があります。借金の大きさ、借入先の多さ、収入の状況などに応じて適する手続は異なります。
できるだけ早めに検討を始めることが大事で、手続の選択について適切な判断を下すためにも専門家のサポートが重要です。
借金で困ったときの対応
借金で困っているという場合、最終的には債務整理の手続を進めることになるかもしれません。
しかしご自身でいきなり債権者に交渉を持ち掛けるのではなく、まずは現状把握、そして専門の機関や専門家への相談から始めることがおすすめです。
収支の現状を把握する
現状を整理するため、収支の状況を改めて確認しておきましょう。
どこからお金を借りているのか、どれだけの借金が残っているのか、それぞれの返済期限と金利なども整理していきます。
併せて、ご自身の収入、そして生活費などの支出の大きさもまとめていきます。
これらの情報を正確にまとめることで、返済の見込みがあるのかどうか、暮らし方・支出内容の見直しもできます。
「借金の返済で生活が苦しくなってきたから債務整理を進めよう」と短絡的に考えるべきではありません。
債務整理によりブラックリストに載ってしまい、クレジットカードの発行や今後ローンを組むときなどに悪影響が及ぶ可能性もあります。
そのため債務整理によらず、自力で返済する道も模索する姿勢が大事です。
相談窓口を利用する
「自分だけで解決するのが難しい」「何から手をつければいいのかわからない」といった場合には、各所の機関が設けている相談窓口を利用することも検討してみましょう。
例えば政府が運営する「多重債務相談窓口」では、無料で借金問題について相談することができ、債務整理に関する手続もここで教えてもらうことができます。
他にも消費者ホットラインや法テラス、日本クレジットカウンセリング協会など、さまざまな相談窓口があります。
弁護士に債務整理の相談をする
前項で説明した通り、各所の相談窓口を利用すれば借金に関する悩みを聞いてもらうことは可能です。
ただ、基本的には手続のことを教えてくれる場であり、直接その機関がご自身の代わりに交渉をしてくれるわけではありません。
そこでより問題解決に向けたアクション、例えば貸金業者への問い合わせや交渉、裁判所への申立手続などをしてもらうのであれば弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば債務整理のことを教えてもらえますし、債務整理に関する手続の依頼を出すことも可能です。
借金問題について弁護士がしてくれること
弁護士は法律のプロであり、紛争解決のプロでもあります。
借金問題についても弁護士に相談すれば、相談者である債務者に代わりさまざまな対応をしてくれます。
貸金業者とのやり取り
貸金業者などの債権者と直接話をしないといけないとなれば、債務者にとって大きな負担となることでしょう。
精神的にもつらい作業ですし、交渉力に差があることから直接対話をしてもご自身にとって有利な結果にすることは難しいです。
そもそも、「交渉をしたいのですが」と問い合わせてもまともに取り合ってくれない可能性もあります。
しかし弁護士を頼れば貸金業者とのやり取りを任せることができます。
弁護士は依頼を受けたことの通知(受任通知)を出し、これによりそれ以降の取り立てをストップさせることもできます。
残債務と過払い金の計算
弁護士に借金に関する厳密な計算を任せることもできます。
債権者に取引履歴の開示請求を行うことで、残債務額を正確に計算していきます。
利息制限法と照らし合わせて、正しい利率での貸し付けがなされているかどうか、払いすぎた分が存在していないかどうかもチェックしてもらえます。
債務整理の準備や手続
必要に応じて債務整理の手続を進めていくことになります。
特に裁判所での厳格な手続が必要な民事再生や自己破産を行うことになれば、必要書類も多数準備しないといけなくなります。
申立書、債権者一覧表、財産目録などの作成、住民票や給与明細、その他財産の内容を証明する書類の取得なども準備として必要です。
例えば民事再生の場合は再生計画案の作成が必要で、減額後の債務をどのように返済していくのかをまとめなくてはなりません。
その内容で認可されなければ手続は進められず、プロのサポートが重要となります。
債務整理中の注意点
「債務整理の手続に進めばもう安心」ということではありません。すでに説明した通り、債務整理も上手くいくケースばかりではありません。
債権者の同意が得られない、自己破産をしたくてもできないといった状況も起こり得ます。
そこで弁護士に債務整理を依頼したときは、今後どうすればいいのか、何をしてはいけないのか、といったことも弁護士からアドバイスを受けておきましょう。
債務整理中の新たな借金は避けるべきです。より返済が苦しくなってしまう可能性がありますし、上手く進んでいた交渉が破綻してしまうリスクもあります。債務整理中の生活費に困ったときの対応も弁護士に相談し、それ以上事態が悪化しないように努めましょう。
当記事で説明した通り、借金で困ったときは状況を整理することや弁護士を頼ることが重要です。
また、早めに相談を持ち掛けることで取れる選択肢も多く残り、自宅を手放すなどのリスクも避けやすくなります。