【弁護士が対応】福岡・天神で借金問題(債務整理)の相談は弁護士法人米盛法律事務所に > 債務整理コラム > 福岡県でする個人再生手続|運用基準や個人再生手続の概要を紹介

債務整理の一種に民事再生手続があります。民事再生法という法律に基づく制度であるため、申し立てるのが法人なのか個人なのか、申し立てを行う地域が異なる場合でも、大枠に違いはありません。

ただ、申立先となる地方裁判所ならではの運用基準が設けられていることもあり、若干の差異が生じることはあります。

 

そこでこの記事では福岡県で行う個人再生手続を取り上げ、手続の概要、福岡地方裁判所における運用基準に関することなどを説明していきます。

  

 

個人再生手続の概要

民事再生手続は、破産手続と異なり、ほぼすべての財産を対象として清算する必要がありません。その後の生活に及ぶ影響も比較的小さくて済みます。そのため「このまま債務を完済するのが難しいが、一部なら返済することができる」という方にとっては便利な制度として機能します。

 

個人も利用できる手続ですが、利害関係や債務額の規模が大きな法人の利用も想定されていることから、個人がするには複雑な制度設計になっています。

 

そこで個人でも民事再生手続を利用しやすいようにと、手続を簡易化した「小規模個人再生」および「給与所得者等再生」の特則が民事再生法に設けられています。これらは個人の利用を想定した手続であるため、「個人再生手続」とも呼ばれます。

 

民事再生手続と個人再生手続の比較

個人再生手続でも通常の民事再生手続でも、手続の大筋に大きな違いはありません。しかし、債権者の決議が簡略化されており、小規模個人再生だと原則書面決議とされています。一定以上の不同意があるときに限り否決になるものと扱われ、手続を利用する個人に比較的有利な内容となっています。

給与所得者等再生だと債権者の決議自体も必要なくなります。

 

また、再生手続の円滑化、監督を行うために選任される人物にも違いがあります。

 

通常の民事再生だと「監督委員」や「調査委員」が選任され、これらの人物は手続全般の監督役を担います。

一方、個人再生では「個人再生委員」が選任され、指定を受けた特定の職務のみを遂行します。

※常に選任されるものではない。

 

このように、申立を行う個人には優しい個人再生手続ですが、当然、要件を満たしていなければなりません。

 

(手続開始の要件等)
第二百二十一条 個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。

引用:e-Gov法令検索 民事再生法第221条第1

 

この条文にある通り、「個人である」「継続的に収入を得る見込みがある」「総債務額5,000万円以下」という要件を満たしていないといけません。

 

福岡地方裁判所における個人再生手続の申立件数

個人再生手続を含む民事再生手続の近年の申立状況を確認してみましょう。

 

福岡地方裁判所における民事再生手続の申立件数

 

令和2年度

令和元年度

平成30年度

再生

3109

10145

2114

小規模個人再生

95812064

99412764

102112355

給与所得者等再生

38777

23830

37856

※()は全国の総数

出典:司法統計「民事・行政事件数―事件の種類及び新受,既済,未済―全地方裁判所及び地方裁判所別」

 

同じ個人再生手続に分類される小規模個人再生と給与所得者等再生ですが、小規模個人再生の方が圧倒的に多く利用されていることが見て取れます。

小規模個人再生のほうが債務の減額率が高いケースが多く、利用するメリットが大きいことがその理由であると考えられています。

 

裁判所によって運用基準は異なる

個人再生手続について深く理解するには、民事再生法への理解が必要です。

ただ、裁判所ごとに運用が異なるという実情があるため、申立先となる地方裁判所の運用基準への理解も重要といえます。

 

例えば、地方裁判所によっては「代理人として弁護士を立てることが原則必要」としているケースや、「全件につき個人再生委員を選任する」としているケースもあります。

 

福岡地方裁判所における運用基準

上述の通り、個人再生手続には「個人再生委員の選任」という特色があります。民事再生法でも次のように規定が置かれています。

 

(個人再生委員)
第二百二十三条 裁判所は、第二百二十一条第二項の申述があった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、一人又は数人の個人再生委員を選任することができる。

引用:e-Gov法令検索 民事再生法第221条第1項前段

 

「選任することができる」とあり、選任の有無は裁判所の判断に任されています。

 

個人再生委員が選任される場合、債務者は個人再生委員と面談を行うことになります。

手続が開始される前、開始後も、必要に応じて面談を求められ、債務を負った経緯や収入の状況、所有している財産の内容などが質問されます。

 

また、面談等を通して、再生計画の内容も考えていくことになります。

収入・支出の状況をベースに、どのように返済をしていくのか、どのように生活を再建していくのか、具体的な計画を立てるのです。

再生計画案が作成できれば裁判所に提出し、裁判所がこれを認可することで個人再生手続は終了となります。

 

個人再生委員の選任について

個人再生委員が選任されると面談が必要になったり追加書類の提出を求められたりします。そのため手間が増えるように思うかもしれませんが、個人再生委員がいることにより的確な指導、助言を受けることができます。個人再生手続も円滑に進みやすくなります。

 

しかしながら、16万円程度の報酬の支払いが必要になるという難点があります。

債務が減額されることを考慮すれば大きな問題にはならないかもしれませんが、生活が苦しい状況で約16万円もの支出が生まれるのは痛手でしょう。

 

選任される傾向は地方裁判所により異なり、福岡地方裁判所だと特に次の点が考慮されます。

 

個人再生委員が選任されやすい要因

負債

・債務額が高額

資産

・債務者の財産や権利関係について、認定・評価上の問題がある

・申告されている財産以外に資産の存在が疑われる

収入

・個人事業主であるなど、現在の収入が不安定

・家族や友人からの仕送りに依存している

・収入が高額で、さらに調査を行う必要がある

支出

・債務超過に陥った原因、ギャンブルなどの行為を継続していると疑われる

その他

・債務者による説明が不十分

・再生計画案の作成に個人再生委員のサポートが必要と思われる

 

詳細は弁護士に相談することをおすすめします。

また、福岡地方裁判所、その他支部の窓口に問い合わせをする場合は、以下のページから連絡先等が確認可能です。

https://www.courts.go.jp/fukuoka/saiban/madoguti_tiho/index.html