破産手続における重要なプロセスの1つが「配当」です。自己破産をする債務者だけでなく、特に債権者にとっても大きな意味を持ちます。

本記事ではこの配当に焦点を当てて、「配当とは何か」そして「配当の手続の流れ」「配当の種類」について説明をしていきます。

  

 

配当とは

破産手続における「配当」とは、自己破産をする債務者の財産をお金に換えて、これを債権者に分配する手続を意味します。

 

破産を行うにあたり、債務者に換価して債権者に分けていくだけの財産が残っていないときは、「同時廃止」という手続によりそのまま破産手続は終了することになります。そのため配当は破産に伴って絶対に発生するプロセスということではないのですが、分配するだけの財産があるのなら配当が必要です。

 

配当については債務者が直接対応するのではなく、裁判所が選任する破産管財人(第三者の立場にある弁護士)が対応します。

そこで債務者には、破産管財人に必要な情報を提供するなどの協力が求められています。

 

なお、債務者の財産が0円になるまですべて配当されるわけではありません。

生きるために必要な最低限の財産については手元に残すことが法的に認められています。

 

配当実施までの基本の流れ

配当を実施するためには、まず債務者が負っている債権の内容を調査する必要があります。

そして債務者の持つ財産を換価処分し、優先度の高い債権から順に配当を実施します。

 

債権の調査について

配当を始めるにあたり、各債権の内容・金額を正確に把握しておかなければなりません。

そのため債権の調査が欠かせません。そこで破産管財人または裁判所から債権者に対し債権届出をするように通知が出されます。

 

この通知を受けて届出を行った債権者が配当の対象となり、破産管財人は調査を実施。債権額を確定させていきます。

 

財産の換価処分について

破産管財人は、債務者の生活に必要な最低限の財産を残してその他をお金に換えていきます。

債務者が持ち家を持っているのならそれを売却。預金などもお金に換え、保険についても解約などが行われます。

換価処分には数ヶ月以上かかることもあり、特に不動産が含まれているときは現金化に長い期間を要する傾向にあります。

 

配当の実施

財産をお金に換えた後、債権者に配当を実施していくのですが、優先的に配当を受けることができる債権から順に分配されます。

 

例えば滞納していた税金、未払いの水道光熱費、未払いのマンション管理費などはその他一般の債権より優先的に配当を受けることができます。

 

なお、「財団債権」と呼ばれる債権については配当の手続とは別に、いつでも直接支払いを受けることが可能です。

破産手続の費用や破産管財人の報酬などが例として挙げられます。

※債権の発生時期によっては未払いの税金や水道光熱費なども財団債権に含まれる。

 

特別な配当方法

原則的な配当は「最後配当」と呼ばれる配当方法です。調査期間を経て、債務者の財産を換価した後で行う配当のことです。

 

しかし配当方法は他にもあります。

 

簡易配当について

自己破産において実務上よくある配当が「簡易配当」です。

 

その名の通り、最後配当よりも簡易な手続での配当が認められ、迅速に配当を実施することが可能となります。

 

簡易配当ができるパターンはいくつかありますが、分かりやすい条件は「配当可能な金額が1,000万円未満かどうか」です。

1,000万円に満たない財産しかないときは、簡易配当とすることができます。
ただ、そうでない場合でも裁判所が相当と認めるときには簡易配当を始めることについて債権者に通知を行った上で、簡易配当を始められるパターンもあります。なおこちらのパターンでは債権者は異議を申し立てることが可能です。

 

同意配当について

「同意配当」という配当方法もあります。

 

債権の届出を行った債権者全員による同意(破産管財人の示す配当時期や配当額などに対する同意)がある場合に限り認められる手法です。

同意した内容に沿って配当を進めていくことになりますので、同意配当が可能であれば簡易配当より迅速な手続進行が期待できます。

 

債務者が注意すべき配当手続の注意点

破産や残債務を消滅させる免責の手続は債務者にメリットがありますが、配当に関しては債務者というより債権者のために行う手続です。

 

しかし、債務者は配当を邪魔するような行為をしてはいけません。配当に限らずですが、債務者には破産手続全般に協力する義務が法律上課されています。妨げとなるような行為をしないことはもちろん、破産管財人から求められたことにはすぐに対応し、丁寧な説明、資料の準備などに応じましょう。
この協力義務を果たさないと、免責不許可となる可能性が出てきます。

 

破産手続の申立てを行う前にも注意が必要です。
「もうすぐ自己破産する予定だから、〇〇を譲るよ」などと不当に財産を身近な人に譲渡したり、安売りしたりする行為も避けなくてはなりません。

また、特定の債権者だけを優遇して先に弁済してしまう行為も禁じられています。

 

このように配当に関連して債務者が留意すべきことはたくさんあります。

「知らなかった」との主張が免罪符になるわけではありませんので、できるだけ安全に手続を進めるためにも弁護士に相談することが推奨されます。
弁護士に依頼すれば、配当の方法や禁止行為を教えてもらえるだけでなく、各種手続を代わりに進めてもらうこともできます。

また、破産管財人に支払う報酬を抑えられることもあります。