破産手続は、破産法に則って進めていくのが基本です。しかし破産の申し立てを行う裁判所によって手続の進行の仕方に若干の差があります。
特に、費用や期間を左右する「同時廃止」と「管財事件」の別は、裁判所ごとの運用基準に従い判断されます。
裁判所によって傾向が大きく異なるわけではありませんし、運用基準も共通していることが多いですが、これを把握しておけばおおよそご自身がどのような破産手続を進むことになるのかがわかるようになります。
そこで、基本的な破産手続の手順、そして福岡で運用されている基準について、以下で解説していきます。なお、会社破産の場合、準備や破産手続の流れが異なりますので、以下では、個人の破産手続をご説明いたします。
目次
破産手続の手順
まずは簡単に破産手続の全体像を掴んでおきましょう。
手順1:弁護士に相談・依頼する
まずは弁護士に相談するところから始まります。
弁護士への相談、手続の依頼をしなくても破産をすることはできます。しかしながら、弁護士がついていないと費用が余計に増えてしまったり手続に多くの時間を要してしまったりする可能性が高まりますので、現状としてほとんどの破産申立ては弁護士が代理人として申請を行うケースがほとんどです。
ですので、まずは気軽に相談してみましょう。
手順2:債権者へ受任通知を送る
弁護士に依頼することで「債権者からの取立てを止めることができる」というメリットが得られます。
この効果は大きいです。独力で対応する場合、破産に向けての準備をしつつ、債権者への対応もすべてこなしていかなくてはなりません。強制執行を受け、差し押さえをされてしまうと、破産費用が確保できなくなったり生活に支障をきたしたりすることもあります。
これに対し、弁護士に依頼すれば、弁護士が債権者に対して「受任通知書」を送付します。
破産に関して弁護士が受任した旨を書面により通知するのです。この通知には取立て・請求をストップさせる効力があり、以降、破産手続や私生活(仕事や家庭など)に集中できるようになります。
手順3:申し立てに必要な準備を行う
ここから、破産申立てをするための資料を準備していきます。
とはいえ、弁護士に依頼している場合にはそれほど大変な作業とはなりません。依頼者が対応すべきことも出てくるかもしれませんが、弁護士の指示に従えばスムーズに準備が進められるでしょう。
例えば次のような書類が破産手続には必要となります。
- 自己破産申立書
- 陳述書・財産目録・報告書
- 債権者一覧表
- 住民票、所得証明書、無資産証明書
- 家計表や給与明細書
ほかにも、保有財産の内容に応じて必要書類は変わってきます。 不動産を所有しているなら「不動産登記簿謄本」や「固定資産証明書」、自動車を所有しているなら「車検証」や「自動車税の証明ができる書類」、その他「保険契約に係る書類」や「株式の取引明細書」などが必要になることもあります。
手順4:裁判所に申し立てを行う
必要書類の準備が整えば、裁判所に対して破産の申立てを行います。
申立て先は、現在の居住地の管轄裁判所(またはその支部)です。住民票ではなく、実際の居住地が基準となります。
居住地が福岡である場合、申立て先は「福岡地方裁判所」となります。
福岡地方裁判所
所在地:810-865 福岡県福岡市中央区六本松4-2-4
アクセス:市営地下鉄六本松駅①番出口から徒歩約3分
また、厳密には「破産手続」だけでなく「免責手続」についての申立ても必要です。
免責許可を得る手続をしなければ、抱えている債務を消滅させることはできません。破産と免責は別物であるということ、これらはセットで申し立てるものであると理解しておきましょう。
破産費用も納めなくてはなりません。
郵券代など細かい費目がいくつかありますが、注視すべきは“破産管財人に対する報酬”の意味合いを持つ「引継予納金」です。
破産手続の開始決定を受けてからは管財人が破産者の財産を管理することになりますので、その仕事に対する報酬分を予納しないといけないのです。
引継予納金は、債権者数や債務総額にもよりますが、福岡地方裁判所の場合、自然人の破産手続の場合は通常20万円程度です。
手順5:自己破産手続の開始決定
申立てが認められると、「破産手続開始決定」が出されます。
そしてその際、①同時廃止事件となるのか、②管財事件となるのかが決まります。
① 同時廃止事件
破産手続開始とともに手続が終了する破産事件のこと。債務者がほとんど財産を所有しておらず、事案が単純であることが明らかなに場合に同時廃止となります。
② 管財事件
破産手続の基本形。破産管財人が破産財団(破産者が持っていた財産)を管理し、債権者に配当していく破産事件のこと。同時廃止に比べると長い期間を要します。
手順6:免責確定
債務者の債務を免責とすべきかどうか、その判断を下すために「免責尋問」が行われます。弁護士とともに裁判所に出頭し、面接を行うのです。
質問に答えなかったり嘘をついたりすると免責許可は得られません。
また、法定の免責不許可事由に該当する場合にも免責許可は得られない可能性があります。
例えばギャンブルや著しい浪費で債務超過になってしまった場合や、その他不正を働いた場合などには認められない場合があります。もっとも、よほど責められるような背景がなければ免責許可(裁量免責)は得られるとされています。
破産手続に関する詳しい流れについてはこちらのページもご覧ください。
福岡県における破産の運用基準
福岡で破産をするとき、福岡地方裁判所が申立て先となります(所在地が北九州市なら福岡地方裁判所小倉支部など支部の管轄となる場合もあるのでご注意ください)。
このとき、福岡地方裁判所の運用基準に従い破産手続は進行していきます。
以下で「同時廃止事件と管財事件の振り分け」に関する認定判断基準に焦点を当てて紹介していきます。
財産の価額による判断
次のような財産が20万円を超えているかどうかが判断基準とされています。
例えば、
- 自動車
- 保険契約解約返戻金
- 退職金の1/8
ただ、差し押さえされているものはカウントされませんし、その他細かい条件がありますので詳しくはこちらのページをご参照ください。
事件の類型による判断
前項の判断基準とは別に、特定の類型に該当するかどうかも判断基準となります。
例えば次の場合には原則として管財事件として扱われます。
- 個人事業主や法人の代表者が破産しようとしている場合
- 破産財団に不動産がある場合
- 債務者の資産の存否・価額・処分の経緯や、負債増大の経緯等が明らかでない場合
- 免責許否の判断に管財人による調査を要する場合
つまり、財産の大きさだけでなく、財産状況等を鑑みて複雑な事件になりそうだと思われるシチュエーションだと管財事件になるということです。
詳しくはこちらのページをご参照ください。
そもそも事案がシンプルだから特別に同時廃止でも良いとされるのであり、管財人に仕事をしてもらわないといけない作業がある事案では当然、管財事件として処理されます。
複雑な手続きはプロにお任せ
上記のとおり、破産手続きは煩雑なものです。借金で悩まれている方の負担の軽減のために、また適切な解決法を見つけるためには、債務整理分野に強い専門家に相談すること、それも早いうちに相談を持ち掛けることが大事です。
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