自己破産の手続を完了して借金などの債務から解放されるには、破産手続を開始することに加えて「免責許可決定」も受けなくてはなりません。そして自己破産の申立てをして破産手続開始決定を受けても即座に免責許可が受けられるわけではありません。順を追って手続は進行していきます。
どのような流れで手続が進んでいくのか、また、どれくらいの期間を必要とするのか、ここにまとめました。

 

 

法人は免責許可が不要

法人が破産をするときは、免責許可決定を裁判所から受ける必要がありません。破産手続を終えることで法人格は消滅しますので、債務者が存在しないこととなるためです。

※法人の債務を代表者などが連帯保証しているとき、その保証債務は残る。その保証人個人が破産をするときは免責許可がなければその保証債務も免れることができない。

破産手続開始からの流れと期間

法人の場合は個人に比べて債権者数が多く、債務額も大きくなりやすいです。財産関係が複雑であるため、破産手続開始決定と同時に手続が終結する「同時廃止」となるケースは稀です。

 

もし、「管財事件」として債権者への配当を行うことになるのであれば、次のような流れで手続は進行していきます。

 

  1. 裁判所が破産管財人を選任する
  2. 債務者が破産管財人と打ち合わせを行う
  3. 会社財産を「破産財団」としての換価・処分していく
  4. 債権者集会を開く
  5. 債権者に配当を行う
  6. 破産手続を終結

 

配当を行うケースでは、手続を終了することを「終結」と呼び、配当を行うことなく終えることは「廃止」と呼ばれます。
終結の場合、廃止に比べて長い期間を必要とし、早くとも半年、一般的には1年~2年ほどの期間が必要になります。

 

なお、法人の場合でも廃止で終わるケースは珍しくありません。実際、破産手続を進めていく過程で債権者への配当ができないことが明らかとなり、その時点で手続が廃止となることも多いです。これは「異時廃止」と呼ばれ、異時廃止となる状況では半年以内に終わることが多いとされています。

 

個人には免責許可が必要

法人ではなく、個人(自然人)が自己破産をするには、免責許可を受ける必要があります。法人のように個人そのものが消えることはないため、財産の清算後、債務が残っていたときは債務者に弁済義務が残ってしまうのです。

破産手続開始からの流れ

個人の場合でも、必要に応じて管財事件として処理されることはあります。法人同様に破産管財人が選任され、当該人物が財産の換価処分、債権者への配当を進めていくという流れになります。

 

法人と違うのは配当後です。免責を認めるかどうかの評価が行われます。

※免責手続の申し立ては、破産手続の申し立てにより同時に行ったものとして扱われるため、別途申し立てをする必要がない。

 

そこで債務者に対して審尋が行われ、債務を負うこととなった背景や現在の状況などが調査されます。その結果「免責をすべきではない」という事情(免責不許可事由)が認められなければ、免責許可を受けられます。

 

《免責不許可事由の例》

 

  • 財産を隠して自己破産をする
  • 一部の債権者だけ特別に返済をする
  • パチンコや競馬で債務超過になった
  • 無駄遣いを続けた結果債務超過になった
  • 調査を受けたときに嘘をつく
  • 過去にも免責手続をしたことがある など

免責許可までの期間

破産手続開始決定から免責許可までの期間は、管財事件となるのか同時廃止事件となるのか、手続の進み方によって異なります。

 

 

免責許可までにかかる期間の目安

管財事件となる場合

・財産の調査から免責に関する審尋、審理などにある程度期間を要する。

・比較的長い期間が必要で、半年以上はかかるものと考えておく必要がある。

同時廃止となる場合

・個人の自己破産でもっとも多いのが「同時廃止」。

・同時廃止の場合、破産手続自体は開始と同時に終わり、免責許可までの期間も短くて済む。

・申し立てから起算しても3ヶ月程度で終えられることが多い。

異時廃止となる場合

・個人の自己破産として同時廃止に次いで多いのが「異時廃止」。

・期間としては同時廃止より少し長い傾向にあり、全体として半年ほどかかる可能性が高い。

 

なお、ここで説明した期間は統計に基づく傾向に過ぎません。実際にかかると思われる期間は個別に評価する必要がありますので、免責許可までにしないといけないこと、期間のことなどが気になる場合は、自己破産に強い弁護士に相談することをおすすめします。