債務整理により残債務を減らしたり免除したりできることがあります。しかし債務者に資産が残っている状態で債権者にのみ負担を負わせるべきではありません。そこで債務者の財産を換価処分し、回収できた金銭については債権者に返済することがあります。

 

ただ、生きるための必要最低限の財産については債務者の手元に残すことができます。そこで債務者としては「何が換価対象となり、何が換価対象外となるのか」が気になるところかと思われます。このことについて当記事で紹介をしていきます。

 

 

財産の換価とは

「財産を換価する」とは、ある財産を売却するなどして現金に換えることを意味します。債務者が債務の弁済をできないとき、債務整理の過程で債務者自身が持つ財産を換価し、そこから得られた現金を債権者に分配していくことがあります。

 

財産そのものにも価値はありますが、どこかの土地や家、中古車などを渡されても債権者としては扱いにくく困ってしまいます。また、債権者間で平等に分配することが困難です。

 

そこで現金化する必要があるのです。

財産が換価される債務整理の手続

債務整理をしたからといって必ず債務者の財産が換価されるわけではありません。

 

例えば「任意整理」と呼ばれる手続では通常財産を処分することはありません。また、「個人再生」という裁判所を介した手続では大幅な債務額のカットが期待できますが、それでも常に財産が処分されるわけではありません。

 

問題となるのは「破産」の手続を進める場合です。任意整理や個人再生の場合、債権者には負担がかかりますが、基本的には債務者もその後返済を続けます。しかし破産をして免責決定を受けると、債務につき弁済する義務がなくなり、債権者は大きな損失を被ることとなります。
その代わり、債務者にもできるだけの負担を負うことが求められます。債務者が持つ家や自動車、その他さまざまな財産を換価。そこから得られた現金を債権者に分配していきます。

 

換価対象の財産

換価対象になる財産は幅広いです。預貯金や不動産、株式、自動車など、さまざまな財産が換価の対象です。ただしこれらの財産があるときに常に処分されるわけではなく、個別にその状態などを見た上で判断が下されます。ほとんど価値がなく売却したところで債権者への配当に役立たないようなケースだとそのまま手元に残せることもあります。数千円、数万円程度の価値しかない財産であれば処分されない可能性があります。

 

当然、現金も配当のために使われますので破産管財人に回収されてしまいます。

 

換価対象外の財産

価値のほとんどない財産については換価されない可能性があることを説明しましたが、初めから換価の対象から外れる財産もあります。これは「自由財産」と呼ばれます。

99万円までの現金

現金も一定額までは自由財産として回収されずに済みます。

 

破産手続を主催する地方裁判所の運用・判断にもよるところですが、「99万円までの現金」であれば残せるケースが多いです。

 

ある程度の現金は残しておかないと債務者が生活できなくなってしまうことが自由財産となる理由です。

差押えが禁止されている財産

法令上、差押えが禁止されている財産があり、これらについては手元に残しておくことが可能です。

 

例えば次のような財産です。

 

  • 生活に欠かせない衣服や寝具、家具、電子機器
  • 生活に必要な食料や燃料
  • 仕事で必須となる道具
  • 学校教育を受けるために必要なもの
  • 仏像や礼拝等のために必要なもの

 

ジャンルとしてはこれらに該当するものでも、贅沢品とも言えるような衣服や家具などであって、特に高額なものに関しては換価の対象になることがあります。数十万円以上するようなものは換価される可能性が高くなってくるでしょう。

破産手続開始決定後に得た財産

原則として、換価の対象になるのは破産手続開始決定を受けるまでに債務者が持っていた財産です。裁判所に破産の申立てをして、裁判所が破産の手続を始めるとの判断を出した後に得た財産に関しては対象外です。
この財産は「新得財産」と呼びます。

 

例えばその後に給与として取得したお金についてはそのまま手元に残すことができます。

換価されるかどうかはケースバイケース

何が換価対象になるのか、何が対象外となるのかはある程度区分することができるものの、実際にはケースバイケースです。差押えが禁止されているものなど換価の対象から外れるものであっても、特に価値が大きいときなど、個別の事情に応じて換価対象になってしまうこともあります。

 

逆に、通常換価対象になるような財産であっても破産管財人が換価するほどの価値がないと評価すると換価されないこともあります。

 

「何がなくなり、何が残せるのかを把握しておきたい」「破産で住む場所も生活するためのものもなくなってしまうのではないか」と不安や疑問を持っている方は弁護士に相談することをおすすめします。破産問題について実績を持つ弁護士であれば、法律上の知識や過去の経験から個別のアドバイスができます。