個人再生は債務整理の一手法です。任意整理より大きく債務額を圧縮することができますし、破産のようにすべての資産を売却するまでの必要もありません。ただし効果が大きな分手続も厳格で、一定の要件も満たさなければ成功はさせられません。
ここにその一連の流れをまとめますので、「個人再生ってどんな手続き?」「個人再生をするにはどうすればいい?」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。
個人再生の要件をチェック
個人再生手続は誰でも自由にできるものではありません。そこでまずは「自分は個人再生をすることができるのだろうか」という点についてチェックしておく必要があります。
少なくとも次の要件は満たさないといけません。
- 安定して収入が得られる見込みがある
- 債務総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下である
- 再生計画について債権者からの不同意がない(以下のいずれに該当すると不同意となる)
- 不同意とした債権者数が1/2以上
- 不同意とした債権者に対する債務額が全体の1/2超
これは「小規模個人再生」と呼ばれるもので、債務者の財産状況に加えて債権者からの同意・不同意が手続の進行に大きく関わってきます。
一方で、小規模個人再生の要件①②をクリアしてさらに「“給与”等による定期的な収入の見込みがあり、かつその額の変動幅が小さいこと」を満たせば「給与所得者等再生」により個人再生を図ることができます。
この場合は債権者からの同意についての要件が撤廃されます。
自宅を残すための要件
自宅を建築したり購入したりするために数千万円以上かかってきますので、住宅ローンを組む方が大半かと思います。このとき金融機関は担保として不動産に抵当権を設定するのが通常です。
この抵当権が付いていると住宅ローンによる債務が滞ったときに当該不動産を売却することができ、債権者は手早く債権回収を図ることができるのです。
そこで、個人再生によってその他債権者と同じように債務整理をしてしまうと、抵当権を実行されてしまい自宅を失うリスクがあるのです。
ただ、生活のために必要な自宅を残せるよう「住宅ローン特則」と呼ばれる特例措置も用意されています。次の要件を満たせば、この特則により自宅を残すことが可能です。
- 借入が「住宅ローン」の契約に基づくこと
- 債務者自身が所有する住宅であること
- 居住用に使っている住宅であること
- 他の借入のために当該住宅を担保に出していないこと
- 滞納による「代位弁済」から6ヶ月を経過していないこと
※代位弁済とは保証会社が代わりにする弁済のこと。
個人再生の基本的な手順
個人再生の手続は次のような流れに沿って進行するのが一般的です。
ステップ | 補足説明 | |
---|---|---|
1 | 弁護士に依頼を出す | ・「本当に個人再生が合っているのか」「個人再生で上手くいく見込みはあるのか」などのアドバイスを受けることが大事。 ・弁護士費用の支払いが必要になる。 |
2 | 弁護士が受任通知を出す | ・弁護士が正式に受任すると、その旨を債権者に通知する。 ・受任通知を出すことで督促がストップし、その後のやり取りも弁護士に任せられる。 |
3 | 取引履歴の開示請求 | ・正確な債務状況を把握するため、弁護士が各債権者に取引履歴の開示を求める。 ・利息の引き直し計算を行い、過払い金が認められるときは返還請求を行う。 |
4 | 裁判所への申立 | ・申立書や財産目録、債権者一覧表、収入証明書などの書類を準備する。 ・申立手数料や官報広告費等で各数千円程度が発生する。 |
5 | 個人再生手続の審査 | ・必要に応じて、個人再生についての指導や監督を行う個人再生委員が選任される。 ・面接での現状説明を求められる。 ・必要に応じて履行テスト(返済を続けられるかどうかのテスト)が実施される。 |
6 | 個人再生手続開始決定 | ・提出した書類の不備、面接等による審査に問題がなければ裁判所が個人再生手続開始決定を出す。 |
7 | 再生計画案の作成 | ・裁判所が債権者に債権の届出を行うよう求め、その結果に応じて再生債権額を決定。 ・確定した再生債権額に基づいて再生計画案を策定して裁判所に提出する。 |
8 | 再生計画案の認可決定 | ・再生計画案の内容が適当か、評価が行われる。 ・小規模個人再生の場合は債権者からの不同意意見が多く出ると認可が下りない。 |
9 | 再生計画に沿って返済 | ・個人再生手続が終了する。 ・その後は再生計画に基づく返済を継続する。 ・計画通りに返済を続けられないと再生計画が取り消されることもある。 |
個人再生手続にかかる期間
債務整理には基本的に時間がかかります。裁判所を利用する法的整理となればなおさらです。
個人再生は民事再生手続の小規模版ですので比較的短期で終えられるとはいえ、全体(弁護士への依頼から再生認可決定まで)で「半年ほど」はかかるものと考えておいた方が良いでしょう。
債務総額が小さい・債権者数が少ないなど場合によってはもっと短く、「3ヶ月程度」で終わることもありますが、逆に「1年ほど」かかってしまうこともありますので注意してください。