ここでは債務整理の概要や種類、過払金返還請求などについて簡単に解説していきます。

 

債務整理で借金問題解決

債務整理とは、借金の減額・免除や、支払期限の猶予などにより、借金の負担を軽減・解消して債務者(借金を借りている者)の経済生活を立て直す方法です。利息制限法や民事再生法、破産法等の各種法令を駆使して借金問題を解決する適法な手段であり、複数の業者から借入を繰り返し、返済が困難となった多重債務者を救済する制度です。

 

債務整理にはどんな種類の方法がある?

 債務整理には主に以下の3種類があります。

 

●任意整理

 任意整理とは、裁判所を介することなく、業者などの債権者と交渉して将来の利息カットや長期分割(支払期限の猶予)等を行い、借金の完済を目指す方法です。債務整理の中で最も利用者の多い方法とされます。

 

 個人再生や自己破産と異なり、返済総額を大幅に減額ないし免除してもらう方法ではありませんが、「引き直し計算」という手段を用いて利息制限法で定められた利率(1520%)より高い利息の借金を減らすことはできます。また将来の返済金の利息を原則としてカットしたり、3年~5年程度の分割回数に増やして月々の返済額を減らしたりする効果があります。将来の利息カット等の返済方法の変更は、債権者(業者などの借金を貸している側)との交渉が必要で、債権者との合意に達すれば和解契約を締結します。

 

 任意整理は、裁判所を介することなく手続きを行えるため、提出書類が少なく比較的簡便かつ迅速に債務整理を行うことができ、依頼者の状況に応じた柔軟な解決を図ることができます。官報に載ることがないため、家族や職場の人間など、周囲の者に気づかれることなく借金の見直しができる点も特徴です。ただし、任意整理の場合でも信用情報機関に事故情報として登録される(いわゆる「ブラックリスト入り」)点には注意が必要です。

 

●個人再生(民事再生)

 個人再生とは、裁判所を介して、全債権者に対する返済総額を減額し、裁判所から認可決定を受けた再生計画をもとに借金の完済を目指す制度です。

 

 任意整理と比較して借金額を大幅に減らすことができ、借金額にもよって5分の1から10分の1程度にまで減額されます。残債務については原則3年間の分割払いとなり、特別な事情がある場合は裁判所の許可を得て最長5年とすることができます。

 

 個人再生の特徴として、自宅を残したまま借金を減らすことができるという点が挙げられます。住宅ローンが残っている場合、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という制度を利用することで、住宅ローンはそのまま返済を継続することを条件に、自宅を処分する必要がなくなります。

 

 個人再生は大きく分けて「小規模個人再生」手続きと「給与所得者等再生」手続きがあります。前者は個人商店主や小規模事業主を対象とし、後者はサラリーマン等の給与所得者を対象としています。もっとも、後者の給与所得者等再生の場合、最終的な返済額の基準に「可処分所得の2年分」という基準が加わることで、手続き後の最終的な返済額が小規模個人再生の場合より高額になるケースがあります。このため、利用できるのであれば小規模個人再生を選択するのが一般的です。

 

 個人再生により債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報として登録され、また官報にも掲載されます。

 

●自己破産

自己破産とは、裁判所を介して、借金の返済の見込みがないこと(支払不能)を認めてもらい、原則として借金の返済を免除してもらう制度です。

 

 自己破産の特徴は、税金等の一部の債務を除き、借金の返済義務が免除される(=借金を返さなくてよくなる)という点です。任意整理や個人再生は返済条件を変更したり、返済額を減額させたりする効果がありますが、手続き後も計画通りに返済していかなければなりません。どれだけ多額の借金を抱えていても、自己破産を利用すれば、すべての借金がなくなります。

 

 他方で、自己破産を利用することでいくつかリスクを負うことになります。

まず、一定額以上の資産価値のある財産は基本的に手放すことになるため、持ち家などは換価処分して債権者に配当することになります。破産手続き開始時において有する財産が換価処分の対象となりえますが、すべての財産を処分しなければならないというわけではありません。手続き後の生活に必要なものなど、処分しなくてもよい財産(「自由財産」という)もあるので覚えておきましょう(破産法343項等参照)。

 

次に、自己破産を行うことで一定の資格につき制限が生じます。制限が生じる資格としては例えば、弁護士や司法書士、公認会計士などの国家資格や、警備員や貸金業者、建設業(一般・特別)、保険外交員をはじめ、後見人・保佐人、遺言執行者など、さまざまな分野で制限が生じます。もっとも、資格制限は一生涯続くものではなく、自己破産手続きの開始から免責許可決定が確定するまでの数か月間(24か月程度)です。その後は復権することで、資格を取得したり、従来通り資格を使えたりすることができます。

 

自己破産には免責不許可事由が定められており、一定の事由があれば返済義務の免責を受けられなくなります。免責不許可事由としては、収入に見合わない浪費やギャンブルなどの賭博などを行い、著しく財産を減少させまたは過大な債務を負担したことなどが挙げられます(破産法2521項各号)。もっとも、免責不許可事由がある場合でも、裁判所の裁量によって免責を受けられる場合があります(裁量免責。破産法2522項)。

 

また、破産手続き中は住居を自由に移転することができず、移転する際は事前に裁判所の許可を得ておく必要があります。もっとも、この居住制限も手続き中のみであり、破産手続きが終了すれば、元通り自由に住居を移転することができます。

 

自己破産特有のデメリットではありませんが、自己破産手続きにより信用情報の事故情報に10年間登録され、また官報に掲載されることになります。事故情報が登録されることにより、ローンを組んだり、クレジットカードの審査が通りにくくなったりします。

 

 以上のようなリスクはありますが、次のようなペナルティは生じません。これらはデマであり、完全に誤った情報です。

・自己破産をしたと戸籍や住民票に載る

・選挙権・被選挙権がなくなる

・解雇される(資格制限が生じるものを除く)

・パスポートを取得できなくなる

・一生、ローンを組んだり、クレジットカードを利用したりすることができない

・家具や家電、エアコンなど、何から何まで財産を処分しなければならない

・制限行為能力者として扱われる

・子どもの進学や将来に不利になる

・年金がもらえなくなる

・借家を出ていかなくてはならない

 

 

自己破産と個人再生

 自己破産と個人再生は双方とも裁判所を介して行う手続きで、よく比較されます。自己破産と個人再生の違いには以下の点が挙げられます。

 

自己破産

個人再生

手続き後の返済額

すべて免除

大幅な減額

持ち家の処分

必要

不要(住宅ローン特則を利用した場合)

資格制限

一部あり

なし

免責不許可事由

あり

なし

管財人への郵便物の転送

あり

なし

官報の記載

あり

あり

ブラックリスト入り

あり

あり

 

 

過払い金が返ってくる条件とは?

過払い金とは、利息制限法の定められる利息(1520%)より高い利息で借り入れ、法律上は借入金の返済が終了したのに余分に払いすぎてしまった金銭のことをいいます。過払い金が発生している場合、貸金業者等に対して不当利得返還請求を行うことにより、過払い金を取り戻すことができます。

 

 かつて消費者金融やクレジット会社は、利息制限法の上限金利を超えつつ出資法上の刑事罰は科せられない「グレーゾーン金利」を利用して、債務者の足元を見るような違法な搾取を続けていました。その後、金利負担の軽減という観点から、貸金業法及び出資法が改正され、2010(平成22)年618日以降、出資法の上限金利が引き下げられ、「グレーゾーン金利」が撤廃されました。これにより、利息制限法の上限金利を超えた利息を設定する業者に対する対応が厳しくなり、最近は多くの業者が利息制限法内の金利に引き下げています。

 

 上記のように、グレーゾーン金利で借り入れた方は過払い金が発生している可能性があります。すなわち、過払い金を返金される可能性があるのは以下の2項目にいずれも当てはまる方です。

2010617日以前に借入を開始した者

②借金を完済してから10年以内の者

 

 もちろん、上記①②の条件を満たさない方でもごく少数ですが過払い金が発生している可能性があります。利息制限法の上限金利は、借入金額によって以下のように異なり、この上限金利を超える金利で貸し付けた業者に対して過払金返還請求を行うことができます。

借入金額

上限金利

10万円未満

20.00

10万円以上100万円未満

18.00

100万円以上

15.00

 

 

 過払金返還請求にはブラックリスト入りなどのリスクは基本的にないため、消滅時効に注意しつつ、業者に対して迅速に請求を行うことをおすすめします。