債務整理には任意整理や自己破産などさまざまな方法がありますが、「特定調停」という手続きも選択肢の一つです。
「費用を抑えて債務整理を行いたい」という方には魅力もある手続きといえますが、メリット・デメリットを他の手続きとも比較しながら検討することが大事です。特定調停の概要、そしてどのような場合に特定調停が適しているのかをここで解説していきますので参考にしていただければと思います。
特定調停の概要
「特定調停」とは、借金の返済が困難になった方が、裁判所を介して債権者と返済方法について話し合い、合意を目指す手続きです。
裁判官や調停委員が間に入って、債務者と債権者の間で無理のない返済計画を立てることを支援してくれます。
特定調停の大きな特徴は債務者自身が手続きを進めることができる点にあり、弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても手続きを進めることが可能です。そのため、費用を抑えたい方にとっては比較的利用がしやすい手続きといえるでしょう。
ただし、特定調停はあくまでも合意に基づく手続きであるため、債権者が合意をしなければ成立しません。裁判所が介入するとはいえ最終的な決定権は債務者と債権者にあるため、双方の歩み寄りが欠かせないのです。
特定調停が適しているケース
特定調停は、すべての借金問題を抱えている方にとって最適な解決策とは限りません。ご自身の状況や希望に合致しているかどうかを判断することが重要です。
では、具体的にどのようなケースで特定調停が適しているのでしょうか?特定調停を検討すると良いケースをいくつか挙げます。
- 債務者自身が積極的に解決に関わりたい
→ 債務者が裁判所に出向いて解決を図るため。 - 債権者との関係をできるだけ良好に保ちたい
→ 強制的な清算・免責ではなく最終目標が和解にあるため。 - 借金の額が比較的小さく返済の見込みもある
→ 大幅な減額は期待できず、返済計画に沿って返済を続けないといけないため。 - 債務整理の費用を抑えたい
→ 弁護士や司法書士を利用せずに手続きを進められるため。
また、最適な手続きを選ぶためには以下で取り上げる他の債務整理とも比較検討することが大事です。
任意整理との比較検討
任意整理と特定調停は、どちらも裁判所を通さずに債務整理を行う手続きですが、いくつか違いがあります。
《 特定調停との違い 》
- 裁判所は利用せず債権者と直接やり取りを行う
- 多くの場合弁護士を利用して債権者と交渉を行う
- 専門家への報酬の支払いが発生する
- 過払い金があればその請求もできる
個人再生との比較検討
個人再生は、裁判所に申し立てを行い、借金を減額した上で、原則 3年間で返済していく手続きをいいます。特定調停と比べると次のような違いがあります。
《 特定調停との違い 》
- 多くの場合弁護士を利用して裁判所とのやり取りを進める
- 専門家への報酬の支払いが発生する
- 自宅を残しつつ借金を大幅に減額( 1/5程度)することができる
- 多数債権者による合意は必要
自己破産との比較検討
自己破産は、裁判所を介して財産を清算し、債務の弁済義務を免除してもらうための手続きです。債務整理の中でももっとも効果が大きな手続きで、減額をしても返済が不可能な場合などに選択することになるでしょう。
《 特定調停との違い 》
- 多くの場合弁護士を利用して裁判所とのやり取りを進める
- 専門家への報酬の支払いが発生する
- 自宅や自動車など換価できる資産については基本的に残せない
- 債権者による合意は不要
特定調停の利用手続き
特定調停により債務整理を行う場合、まずは簡易裁判所への申し立てが必要です。その後裁判所から伝えられた期日にて事情説明を行い、調整期日にて債権者と条件のすり合わせを行います。
相手方と合意ができれば調停は「成立」となりますが、合意が取れなければ「不成立」となってしまいます。
- 簡易裁判所への申し立て
→ 申立先となる裁判所は債権者側の住所地を基準に考える。 - 事情説明をする
→ 「事情聴取期日」にて債務者が裁判所に出向き事情を伝える。 - 条件のすり合わせ
→ 「調整期日」には債権者も出頭して返済期間や返済方法のことなどを決めていく。 - 成立・不成立
→ 不成立の場合は別の債務整理手続きを検討することになる。
特定調停で解決できそうか、他の最適な手続きはないか、など気になることがある場合は債務整理に強い弁護士にご相談ください。