民事再生の1種である「個人再生手続き」を利用する場合、ご自身で対応するより弁護士に依頼することが推奨されます。弁護士を利用することには次のメリットがあるためです。
- 手続き内容の相談にのってくれる
- 債権者による取立行為を止めることができる
- 財産目録や再生計画案の作成をしてくれる
- 個人再生委員への報酬が必要なくなる
- 自宅を残せる可能性が上がる
債務整理の手続きについて調べている方、個人再生手続きを検討している方はぜひ当記事に目を通していただければと思います。
手続き内容の相談にのってくれる
債務整理にも「破産」「特定調停」「個人再生」「任意整理」など、さまざまな種類があります。いきなり個人再生と決めつけるべきではなく、まずは最適な手段を検討することが大事です。
その検討にあたってわからないことがあれば、裁判所で質問できることもありますが、個々の内容や判断に関して裁判所が答えることはできません。できるのは必要書類の内容や費用についての案内であり、例えば「私が個人再生をした場合、いくら返済すればいい？」といった相談にはのってもらえません。
一方で弁護士がついているときはこうした個別の相談をすることもでき、ご自身が有利になるための方法など、味方として具体的な提案をしてもらえるでしょう。
債権者による取立行為を止めることができる
弁護士に手続きの依頼をした場合、弁護士は債権者に対して受任通知を出します。
受任通知は、「当該弁護士がその債務者に関する債務整理手続きについて委任を受けた」という事実を知らせる文書ですが、この通知によって取立行為を止めることができるのです。
※裁判所が交付する「申立受理票」を申立人自身が各債権者に送付することで取立が止まることもある。
財産目録や再生計画案の作成をしてくれる
個人再生手続きご自身で進めていく場合、申立書を作成することはもちろん、他にも「財産目録」「報告書」「再生計画案」「返済表」など数多くの書類を作成しないといけません。
そしてこれらの書類を裁判所が定める期日までに提出しないと、これまでの手続きが無駄になってしまったり、裁判所から破産宣告を受けてしまったりすることもありますので注意してください。
弁護士がいないときは「個人再生委員※」と呼ばれる機関が設けられることもあり、この個人再生委員が助言してくれることもありますが、やはり助言できる内容にも限度があります。あくまで中立の立場であって、債務者が有利になるような積極的なサポートはしてくれません。
※個人再生委員：弁護士が付いていない個人再生手続きにおいて、債務者の収支や財産状況を整理し、再生計画案作成に関する助言などを行う公平中立な機関。裁判所が選任をする。
債務者にとって有利な結果となるよう、制限なく代理で各種書類を作成したり集めたりできるのは弁護士だけです。
個人再生委員への報酬が必要なくなる
上述の通り、代理人弁護士が付いていない状況下では個人再生委員が原則選任されます。
この方が選任されるときは、報酬分が手続き費用として上乗せされますので、少なくとも20万円程度は用意しなくてはなりません。
弁護士を付けるときは「弁護士費用がかかってしまう」と心配に思うかもしれませんが、単純にその費用をデメリットと捉えるべきではなく、個人再生委員への報酬も加味して比較することが大事です。弁護士費用の相場は30万円ほどといわれていますので、費用の点で大きな差が付くわけではありません。
自宅を残せる可能性が上がる
個人再生手続きの良いところは、債務の大幅な減額ができることに加え、「住宅ローン特則を使えば自宅を残すことができる」という点も挙げられます。
住宅ローン特則とは個人再生手続きにおけるオプションのような制度で、住宅ローンについての債務を除外して債務整理ができるというものです。
ただ、この特則の適用を受けるには「一部免責された借金などを計画通りに返済しつつ、これまでの延滞分も含めた住宅ローンを支払い続け、原則3年で①住宅ローンの遅滞分が解消されて②その他借金等の返済も終了できる」という内容の再生計画案を策定しないといけません。
当然、実現可能性の高い計画案であることが大事ですし、申し立て前には住宅ローン債権者との打ち合わせなども必要となります。通常より手続きの難易度が高くなりますし、上手くいかなければ自宅が競売にかけられて手放さないといけなくなってしまいます。
他方、弁護士がついていれば、ご自身で対応する場合に比べて現在の住まいが残せる可能性も高められます。