債権者との個人的な交渉を介して債務整理を図る「任意整理」では、通常、弁護士に相談を始めるところからスタートします。
そこからいくつかの段階を経て債務額や支払方法等についての調整を図り、返済を始めることになるのです。
そしてその間、債務者は債務から完全には解放されませんし、資金の扱いには留意しなければなりません。
この記事でこの任意整理が完了するまでに要する期間について解説していきますので、おおまかなスケジュールを理解して計画的に取り組めるようにしておきましょう。
任意整理の流れと期間
任意整理は裁判所を介さない債務整理の一種です。債権者と債務者の個人間で進めることになり、自由度が高い分、交渉の仕方や交渉相手となる債権者によって必要な期間は大きく変わってきます。債務額が大きな場合や、特に債権者数が多い場合には手続が大変になってくるため、相場より長期に渡る可能性が高くなってくるでしょう。
そこで以下で説明する任意整理の流れや期間に関しては、あくまで目安であることを認識して確認していくようにしてください。
弁護士への相談から返済計画の合意まで:2~6ヶ月
まずは、任意整理を成功させられるかどうかのポイントとなってくる「弁護士への相談から返済計画の合意」までの流れと期間を見ていきます。
最初に、「任意整理をすべきかどうか」の確認も兼ねて弁護士に相談を行うことになります。場合によっては民事再生や破産なども検討すべきかもしれません。任意整理をしようと思っても、状況によってはほぼ不可能な場合もあるからです。その判断・評価を弁護士にしてもらいましょう。
相談自体にそれほど期間は要しませんが、より短期的に、スムーズに手続を進めていくためには、借入状況がわかる資料・債務者の経済力がわかる資料を用意しておくことが大切です。
続いて、任意整理に関して正式に依頼を行います。
弁護士は依頼を受けて「受任通知を債権者に送付」します。これにより取り立てをストップさせられます。法律上の効果として、取り立て規制の効力をはたらかせることができるため、その意味でも弁護士の利用は必要的と言えます。
受任通知送付に関しては、依頼から3日程度で行われることが多いです。
任意整理を行うとの事実が債権者に知られてからは、弁護士が窓口となって債権者とやり取りをしてくれることになります。
そして取引履歴の開示請求などをし、債務額の調査を行います。この手続は、数週間から2ヶ月ほどかかります。なお、ここでする「引き直し計算」により過払金の存在が認められると、想定より債務額が小さくなる可能性もあります。
債務額を確定でき次第、返済条件に関する協議を始めます。
具体的な返済計画を策定し、和解を図るのです。協議においては、債務者の経済力等を考慮し、債務額の減額や返済期間の延長など図ります。弁護士協力の下策定する返済計画に合意が得られれば、債務者は生活を維持しつつ無理のない債務の返済ができるようになるでしょう。この和解交渉は債権者数によっても大きく異なります。債権者数が少なく、すぐに応じてもらうことができれば数週間程度で終わることもありますが、長いと3ヶ月程度、それ以上を要することもあります。
弁護士に相談をしてから返済計画への合意が得られるまでの期間は「2~6ヶ月」が目安と捉えておくと良いでしょう。
返済の開始から任意整理完了まで:3~5年
返済計画に合意が得られても、債務がすべてなくなるわけではありません。その後債務者は当該計画に従って確実に義務を履行し続けなければなりません。
そしてこの返済開始から任意整理の完了(返済の完了)までに要する期間は、通常「3年間」とされています。つまり、減額された債務額につき36回の分割返済で対応するということです。ただ場合によっては「5年間」、60回の分割返済としてもらえることもあります。
長期に設定してもらうことでその間の返済自体にかかる負担は軽減させられますが、長期的に債務と向き合っていかなければならず、精神的な負荷は大きくなってしまうかもしれません。そのため返済計画の内容は吟味し、弁護士を相談しつつ決めていくようにしましょう。
また、一般的なケースでは、数回支払いが遅延してしまった場合、任意整理(和解契約)が解除される契約の場合が多いため、債務の返済は確実な計画を立てておく必要があります。
任意整理にかかる費用の相場
任意整理に要する費用も債権者数に依存します。
料金設定は相談先の法律事務所によっても異なりますが、多くは「1社あたりの着手金」「1社あたりの報酬金」「減額報酬」から構成されています。
相場としては、着手金や報酬金で1社につき少なくとも2~3万円はかかると言えます。交渉を経て減額ができたときには、減額報酬として「1万円」といった定額費用が発生、あるいは「減額した分の10%」が発生したりします。
その他各種費用を合わせると、債権者が1社しかいないケースにおいても5万円ほどは費用がかかると見ておいたほうが良いでしょう。複数の債権者がおり、10万円から20万円ほどかかるケースもよくあります。
当事務所における費用については、こちらをご覧ください。
費用が支払えないときの対応策
任意整理をするための費用捻出も難しいという場合、弁護士に「分割払いに応じてもらえないかの相談」をするか、「法テラスの利用」も検討すると良いでしょう。
弁護士に支払う費用に関して支払の方法が厳格に指定されているわけではありません。依頼先の弁護士に相談して、そこで同意が得られれば分割払いとすることも可能です。ただし、本来分割払いに対応していないところ、例外的措置として対応してもらうのであれば、「きちんと支払いをしてくれる人だ」と思ってもらえなければなりません。また、任意整理費用とは別に債務の返済も続くことになるため、債務者には一時的に大きな負担がかかることも覚悟しておく必要があります。
法テラスに関しては、「費用の立替え制度」があります。法テラスが弁護士費用や司法書士費用等の立て替えをし、利用者が後で法テラスに対し分割で返済していくというものです。任意整理に限らず、民事事件・家事事件・行政事件に関する手続で利用することができます。ただしこちらの制度を利用するには一定の条件を満たす必要があります。少なくとも国内に住所がなければなりませんし、「収入が一定額以下」「和解等によって紛争が解決できる見込みがある」「(訴訟を提起する事案なら)勝訴の見込みがないとはいえない」と評価してもらわなければなりません。
同制度が気になる方は一度法テラスのWebサイトも確認してみると良いでしょう。
弁護士法人米盛法律事務所は、債務整理に強い事務所ですので、任意整理でお悩みのご相談もお受けしております。
なお当事務所では、個別の事案によって、弁護士が依頼者様の事情に合った支払い方法を提案しておりますので、お気軽にお問い合わせください。