借金の返済に困っている方でも、債務整理を行うことで経済的・精神的な負担を軽くできるかもしれません。特に、債務整理の1つ、個人再生を進めることができれば大幅な残債務の減額が期待できますので「個人再生をできるかどうか」は今後の生活を大きく左右する要因となり得ます。
ただし個人再生を行うにもいくつか条件を満たさないといけません。当記事で掲げる各種条件をクリアできそうかチェックしてみましょう。判断に迷うときは債務整理のサポートを行っている弁護士も頼ると良いです。
個人再生でクリアしておきたい条件
個人再生で借金問題の解決を図る場合、次の条件がクリアできるようにしておきましょう。
- 手続費用の確保
- 収入があること
- 債権者の協力が得られる
- 現実的な返済計画の策定
- 債務の総額が5,000万円以下
各条件の詳細を以下に整理していきます。
手続費用の確保
個人再生は借金などの債務の負担を減らすための手続ですが、この手続のために費用が発生します。そのため費用の負担もできないほど困窮していると個人再生を進めることはできません。
とはいえ必須の費用だけであれば大金まで準備する必要はなく、裁判所への申立手数料や官報公告費用などを合わせても数万円程度で足ります。
ただ、弁護士に依頼をするとなれば数十万円ほどかかるケースもあります。弁護士は必須ではありませんが活用することで個人再生の成功率を上げられますし、トラブルを回避できる可能性も高められますので前向きに考えておきたいところです。
収入があること
個人再生を進めるには「収入を安定的に得られていること」が求められます。
大きな収入力までは求められていません。しかし個人再生はすべての債務を免責する制度ではありませんので、債務の一部を今後返済できるだけの力は持っていなくてはならないのです。
そこで定職に付いているなど、安定した収入の存在が特に重要になってきます。会社員や公務員として働いており毎月の稼ぎがある方、あるいは年金生活者などであればこの条件を満たすことができるでしょう。一方で、稼ぎはあるものの日雇い労働がメインである場合は印象としてはマイナスです。歩合給の割合が高く変動幅が大きいのも評価としては良くありません。
債権者の協力が得られる
個人再生手続のうち「小規模個人再生」と呼ばれるタイプだと、債権者の半数以上・債務総額過半数債権者からの同意が必要となります。そのため大半の債権者から反対を受けるような状況だと個人再生を進められないおそれがあります。
また、一部の債権者にのみ優先的に返済をすることも認められません。裁判所を活用した公的な債務整理では債権者の平等が原則ですし、反対を受けそうだからと特定の債権者にだけ返済していては他の債権者から反発も受けてしまうでしょう。さらに、債権者を故意に害する行為があったとして裁判所から個人再生を認められなくなる危険性もあります。
現実的な再生計画の策定
個人再生は民事再生手続の1種です。そして民事再生を行うには「再生計画」を策定し、裁判所にその内容を認めてもらわないといけません。
自己破産と違ってその後返済を続ける必要がありますので、返済可能性が高いことをまとめた計画書を作成して「債務整理をすれば、残債務についてはきちんと完済できる」ということを客観的に示せないといけません。
そして再生計画において重要なのは「返済ができること」のアピールだけでなく、「その返済計画の実現可能性が高いこと」のアピールも行うことです。設定する毎月の返済額と現在の毎月の収支が釣り合っていなければいけません。毎月の収入の範囲内であっても、あまりに余裕がない返済計画だとまた返済が滞ってしまうのではないかと疑われてしまいます。
債務の総額が5,000万円以下
個人再生は、債務の規模がそれほど大きくない場面を想定した手続です。「債務規模が大きくないから、簡易な手続での減額を認めてしまい、迅速に債務者の再生を図る」というのが主な趣旨です。
規模の目安は「債務の総額が5,000万円を超えるかどうか」で、民事再生全般を規律した民事再生法でも債務が5,000万円を超えると個人再生ができないと定められています。もし5,000万円以上の借金をしているときは個人再生ではなく原則通りの民事再生手続によるか、破産手続によって解決を図る必要があるでしょう。
ただし、住宅ローンの額は除いて判断することが認められます。
個人再生が難しいときの対処法
現状、個人再生の手続を採るのが難しいと思われる場合でも、対処できるケースがあります。例えば安定した収入の確保ができていないのであれば、就職先を見つけることで問題を解決できるかもしれません。
個人再生にかかる費用がネックになっているときでも、費用を積み立てておくことでなんとかなるかもしれませんし、弁護士費用に関しては相談すると分割払いに応じてもらえる可能性もあります。
また、再生計画の内容が適切でなかったのなら弁護士に相談して改善を加えるなど、できることはあるかもしれません。
どうしても個人再生が難しいときは自己破産など他の債務整理も検討することになりますが、諦める前に一度専門家に相談することをおすすめします。状況を整理し、本当に個人再生に適していないのか、どうすれば個人再生の手続を進められるのか、別の手段による場合の方針などさまざまな観点からアドバイスをもらうことができるでしょう。