借り入れをしている、あるいは過去に借り入れをしたことがある場合、「過払い金」が請求できるかもしれません。
どのような場合に過払い金の請求ができるのか、ポイントとなる2つの条件をここで解説していきます。
条件1:利息制限法の上限利率を超えた借金をしている
借金は消費貸借契約と呼ばれる契約類型に属するのですが、これは借り受けたモノと同じ種類や質のモノを返還するという約束を意味します。
この消費貸借契約の目的物を金銭とした場合を特に「金銭消費貸借契約」と呼びます。そして金銭消費貸借契約を成立させる上で利息の定めは必須ではなく、むしろ利息を請求するなら別途その約束を交わすことを法は求めています。
貸金業者などは利息の請求があることで利益を生み出すことができますので、利息の定めは置かれるのが通常です。借り入れをした方も、利息が生じることは承知の上で契約を交わします。
ただ、ここで問題になるのが「利息の大きさ」です。
利息制限法とは
利息が大きくなると、それだけ借り入れた方は大きな金額で返還をしなければならなくなります。
返還が遅くなればなるほど膨れ上がってしまい、利息分がいつまで経っても返せないという事態に陥る可能性が出てきます。
借り入れをした方も契約当初に利息の定めについては了承をしているはずですが、一般消費者と貸金業者とのパワーバランスは均等とは言えず、仕方なく受け入れるということもあるでしょう。
そこで利息制限法が機能します。その名の通り利息に制限を掛ける法律であり、借り入れをした消費者の保護が主目的とされています。
具体的には、「利息の制限」「賠償額の予定の制限」「元本額の特則」「みなし利息の特則」「保険料の制限」といった規定が置かれています。
上限利率とは
このうち特に知っておきたい、重要な規定が「利息の制限」です。
同法でも第一条にて、以下のように定めが置かれています。
第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
引用:e-Gov法令検索 利息制限法第1条(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000100)
この定めが置かれたことにより、10万円未満の借り入れに対して適用できる年20%が最大の利率となっています。10万円~100万円までなら上限年18%、100万円以上に関しては上限年15%までです。
上限利率を超えた分は無効になる
上の条文にある通り、上限利率を超えた場合、その超過部分は無効 になると法律で定められています。
過払い金として請求できるのは、この超過部分です。 利率に関しては契約書にその定めが置かれているはずですので、利息に関するルールを置いた契約書内の条項を確認してみましょう。「年〇〇%の利率」を適用させるなどと記載があればすぐに調べられます。当該情報が見つからない場合には調査を行う必要が出てきます。
なお、上限利率の定めがあるのは遅延損害金に対するものも同様です。ただし値が異なりますので要注意です。
同法では、上に挙げた上限利率の1.46倍までは許容されていますので、以下の値を超える部分が無効となります。
- 10万円未満:年2%
- 10万円~100万円未満:年28%
- 100万円以上:年9%
遅延損害金に関しても契約書にその定めが置かれているはずです。「弁済がない場合、年○○%の割合による遅延損害金を支払うものとする」などといった文言がないか、確認してみましょう。
条件2:請求権の消滅時効が完成していない
過払い金の請求をするには、条件1を満たしていることが前提です。
利息の定め自体は合法ですし、借り入れをした方にはその支払をする義務が課されます。
しかし利息が大きすぎると無効になるところ、その分の支払いをしてしまったのなら過払い金が発生している、ということになります。
ただ、この過払い金を請求する権利を行使するには期間の制限があります。消滅時効完成後に請求をしても、相手方に拒まれることが考えられます。
消滅時効の完成とは
過払い金の請求権のみならず、債権は広く消滅時効に係ります。
消滅時効とは、一定期間の経過により、債務者側が権利の消滅を主張できる仕組みを言います。
過払い金の請求に関しては、借り入れをした方が債権者、貸主側が債務者となります。つまり、過払い金の請求権をいつまでも行使しなければ、当該権利の債務者である貸主側が、過払い金の還付を断れるということになるのです。
消滅時効に関しては、権利の内容に合わせて所定の期間が法定されており、この期間が満了することを「消滅時効の完成」と表現したりもします。
このような仕組みが設けられているのは法的安定性などを守るためです。
大昔の事由に基づく権利行使がいつまでも認められると、債務者側はいつまでたっても不安定な立場に立たされてしまいます。いつ行われるかもわからない請求に対し備え続けなければなりません。また、いつまでも行使しない債権者側にも一定の責任があると考えられています。
ただ、この観点からは、債権者側が「権利の行使ができることを知ってから」消滅時効期間の進行をする必要もあります。そこで法は、両者のバランスを考慮し、「権利が生じたときから〇年、または債権者が権利を行使できることを知ったときから〇年のいずれか早い方」で消滅時効が完成する旨規定しているケースが多いです。
過払い金の請求権は5年~10年で消滅
過払い金の請求権に関しては、以下のいずれか早い方で消滅時効が完成してしまいます。
- 借り入れをした方が過払い金の請求ができると知った日から5年
- 取引が終了してから10年
取引を終えてから10年以内に対応しなければなりませんし、過払い金の請求ができることを知ったのならその時点から5年以内に対応をしなければなりません。
そのため、過払い金の請求をする上では、この期間を経過していないことが第2の条件となるのです。
過払い金は、煩雑な計算や、ご自身が本当に条件に当てはまっているのかわからないケースが非常に多くあります。
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