自己破産に関する基礎知識や事例

自己破産は債務整理手続きのうちの一つです。他の債務整理手続きには、任意整理や個人再生などがあり、この二つが借金の額を減らして、より返済をしやすくする手続きであるのに対し、自己破産は裁判所に申立てを行うことで全ての債務の支払い義務を免除する手続きとなっています。
債務の支払い義務を免除されるということは大きな特徴ですが、それに伴うデメリットも当然あります。
本ホームページでは、自己破産の手続きの流れやメリット・デメリットについて解説をしてきます。

自己破産は3種類ある

自己破産手続きには同時廃止事件、管財事件、少額管財事件があります。それぞれ適用されるケースが異なります。具体的には以下で解説をしてきます。

同時廃止事件

同時廃止事件は、申立人(自己破産をする人、以下同じ)に債権者に分配するほどの財産がない場合に適用される手続きとなっています。手続きの流れの箇所でも説明をしますが、財産がないため破産管財人による財産の調査や換金、分配が行われないため短期間で手続きを終えることができます。

管財事件

一定以上の財産がある場合や借金の理由がギャンブルや浪費によるものである場合に適用されるものです。一定以上の価値のある財産が差し押さえられ、破産管財人に対する報酬として予納金と呼ばれるものを納める必要があります。

少数管財事件

管財事件の中でも、予納金の額を少額で抑えることのできる管財事件を少額管財事件といいます。ただし、少額管財事件は利用を認めている裁判所が少ないほか、弁護士に依頼をしている、債権者の数が多くなく債務関係が複雑ではない場合にのみ利用できるものとなっています。
なお、弁護士法人米盛法律事務所のある福岡地方裁判所においては、少額管財といった振り分けはされていないため、同時廃止事件か管財事件かの2種類になっています。

以上の3つの種類の自己破産手続きについて解説をしました。実際に利用されている手続きの7割が管財事件となっています。

自己破産手続きの流れ

弁護士に相談・依頼

受任通知の送付

書類作成等の申立て準備

裁判所での面接と自己破産
手続きの開始

(管財・少額管財事件の場合) 債権者集会と破産管財人による財産処分

免責確定

STEP 1 弁護士に相談・依頼

自己破産手続きをする際には弁護士や司法書士などの専門家に依頼をすることとなります。
債務整理を専門とする法律事務所にて相談をすることをおすすめいたします。
相談料に関して、弊所では債務整理に関するご相談の場合、初回無料としていますのでご安心ください。
ここで弁護士に相談した結果、方針や費用などの条件面で納得をした場合には、その場で弁護士と委任契約を締結することとなります。

STEP 2 受任通知の送付

弁護士と委任契約を締結後、弁護士はすぐに各債権者に対して受任通知というものを送付します。受任通知は、簡単にいうと、送付されて以降は債務に関する通知は全て担当の弁護士が受け付けるという旨の通知となります。
受任通知が送付されることによって、督促状が一旦ストップするため、実質的に支払い義務から解放されることとなります。
これ以降、本来返済に充てていた額を弁護士の着手金や破産管財人の予納金に支払いに充てることができます。

STEP 3 書類作成等の申立て準備

自己破産手続きは申立てのために準備をしなければならない書類が非常に膨大となっています。
個人でも自己破産を申立てることは不可能ではありませんが、専門家である弁護士に依頼をすることで、書類の作成を全て任せることができ、不備なども生じないため、弁護士への依頼をおすすめしています。
申立人としては、弁護士の指示に従って必要な書類の収集・作成だけとなります。

STEP 4 裁判所での面接と自己破産手続きの開始

書類の作成が終わると、申立人の住所を管轄する裁判所に提出し、自己破産手続きの申立てを行います。
裁判所に書類を提出すると、弁護士と裁判官の面談、即日面談が行われます。
即日面談には申立人は参加する必要はありません(なお、弁護士法人米盛法律事務所のある福岡地方裁判所においては即日面談といったものはありませんので、裁判所への申立て書類の提出のみとなっています)

STEP 5 (管財・少額管財事件の場合) 債権者集会と破産管財人による財産処分

債務者が一定の価値がある財産を保有している場合など裁判所が管財人を必要と判断した場合には、管財事件もしくは少額管財事件となります(福岡地方裁判所においては、少額管財といった振り分けはされていないため、全て管財事件となります)。

管財事件では、破産手続き開始決定が出ると同時に破産管財人が選任され、破産管財人が破産者の財産を換価して、債権者に平等に配当を行います。

上記の配当を行う財産の調査は、破産者とその代理人弁護士と破産管財人の面接によって調査がなされます。

自己破産手続き開始決定後3ヶ月後ほどで債権者集会が開催されます。破産管財人が債権者に対して破産管財人から事件の概要や配当の見込みなどについて報告を行います。
1回目の集会までに財産の換価が終わっていれば、集会は1回で終わりますが、換価が終わっていない場合には再度集会が開かれます。
なお、福岡地方裁判所においては、非招集型といって債権者集会を開かない方式による手続きも取られています。この場合、債権者集会は開催せず、官報への掲載を1回増やす形式をとっています。

STEP 6 免責確定

債権者集会から約1週間程度で、依頼した事務所から免責決定文が送付されます。
免責許可決定から4週間が経過すると、免責許可決定が確定します。
これをもって、破産手続きは終結し、借金は免責されることとなります。

自己破産手続きのメリット・デメリット

自己破産手続きのメリット

自己破産手続きのメリットは、やはり債務が免除されるため、返済義務から解放されることでしょう。
また自己破産には、家族への取り立てがなされるという誤ったイメージを持たれている方がいらっしゃいますが、家族が保証人となっていなければ、家族への支払い義務が発生することはありません。

自己破産手続きのデメリット

自己破産は上述のように、支払い義務から解放されるという大きなメリットがある一方で、デメリットが多く存在します。
まずは財産が差し押さえられてしまうという点でしょう。実際に差押えの対象となる財産、差押えの対象とならない財産については次のコラムにて説明をしています。

また、自己破産に限らず、債務整理手続きを行うと、信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)の事故情報に記録が載ってしまいます。いわゆるブラックリストと呼ばれているものです。
ブラックリストに載ると、新たに借入ができなくなったり、クレジットカードの作成や分割払いを行うことができなくなったりなどといったデメリットが発生します。

さらにマイホームを所有していた場合には、マイホームが差押えの対象となるため、引っ越しをせざるを得なくなったり、車が差し押さえられた場合には移動手段がなくなるといったように、家族に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
賃貸にお住まいの方に関しては、そのまま賃貸に住み続けることができます。

自己破産手続きで差押えの対象となる財産

ドラマやアニメなどのシーンで、自己破産後に家にある家具や電化製品など全てものに「売約済」「差押え済」といったようなシールが貼られているシーンをご覧になったことがある方がいらっしゃると思います。
自己破産手続きをすると全ての持ち物を差し押さえられてしまうのではないかと思っていらっしゃる方がいますが、それは誤りです。
具体的に差押えの対象になる財産は以下のとおりです。

  • マイホームや土地などの不動産
  • 自動車やバイク
  • 高額な現金・預貯金
  • 時価20万円以上の価値のある財産

この中でも自動車やバイクに関しては差押えを免れることができる可能性があります。
基本的には車やバイクは中古品となっており、査定額が20万円未満になる場合には、財産価値がないと判断されるからです。

また高額な現金・預貯金の具体的な額としては、現金99万円以下に関しては、自由財産として保有することが認められており、預貯金は20万円以下がその基準額とされています。

他方で差押えが禁止されている財産もあります。上記の現金・預貯金でも出てきたいわゆる自由財産と呼ばれるものです。
具体的には、当面の生活に必要な衣類や家具・台所用品・家電などが挙げられます。

東京地方裁判所民事執行部によると、以下のものが差押え対象外の家具としています。福岡地方裁判所においても、基本的に同様の運用がなされています。

  • 洋タンス
  • 和タンス
  • 整理タンス
  • 食器棚
  • 食卓セット
  • 調理器具
  • 暖房器具

また、テレビや冷蔵庫、洗濯機といった生活必需品や、パソコンなど仕事に必要な家電もあると思います。
このような財産については、1点のみを残すことができます。
1点のみ残すことができる財産については以下のものがあります。

  • テレビ(29インチ以下)
  • ビデオデッキ
  • 洗濯機
  • 冷蔵庫
  • エアコン
  • 電子レンジ
  • ラジオ
  • 瞬間湯沸かし器
  • 掃除機

自己破産手続きの費用

自己破産手続きに必要な費用の相場は、裁判所に支払うものが2〜40万円、弁護士費用が30〜50万円となっています。
弊所では、同時廃止事件では25万円~(税別)、管財事件では35万円~(税別)となっています。管財事件の場合は業務量が多くなる傾向にありますので、同時廃止に比べ高額になっております。
以下では具体的な内訳について解説をしていきます。

裁判所に支払う費用はその内訳のほとんどが破産管財人の報酬である、予納金となっています。
裁判所自体に支払う実費は、申立て費用と予納郵券代のみとなっています。
申立て費用とはその名の通りで自己破産手続きの申し立てに必要な費用で、収入印紙1500円程度のものです。
予納郵券代は債権者に自己破産を決定したことを伝えるために必要な郵便費となります。債権者が多ければ多いほど高くなり、基本的には3000〜15000円となっています。

予納金に関してはいかなる手続きを利用するかによって変わってきます。
例えば同時廃止事件であれば破産管財人が必要ないため、1〜3万円と比較的少額で済みます。
管財事件であれば最低でも50万円、少額管財であれば20万円程度が目安となっています。
なお、福岡地方裁判所では、少額管財はなく総じて管財事件となりますが、管財費用は20万円程度、事案の複雑性に従って高額になっていくといった取り扱いがなされています。

また、弁護士費用には着手金と成功報酬が含まれています。
着手金は依頼をし、委任契約を結んだ段階で支払うものであり、一度契約をすると解除ができないため、返金はされません。
成功報酬は、自己破産手続きが決定し、免責が確定した場合に支払う費用となっています。
相場としては成功報酬を請求しないところもあれば、大体20万円ほどを請求する事務所があります。
成功報酬を請求しない事務所は、その分着手金が高くなっています。
弊所の料金については、こちらをご確認ください。

弁護士費用は決して安い額ではなく、今借金の返済に困っているのに、すぐに支払いができないという方もいらっしゃると思います。これらの着手金や成功報酬は分割払いを認めている法律事務所もあるため、相談の段階で分割払いができるかどうかということもしっかりと確認しておきましょう。
弊所では、受任通知書の送付後は返済はストップするため、その費用を破産手続きの費用として、分割払いの計画を立てて契約するといったケースもありますので、一度お気軽にご相談下さい。