遺産分割協議書の作成方法~トラブルを回避するためのポイント~
遺産分割協議書は、相続人間で決めた遺産の分け方についての証拠となる書類です。適切に作成しないと後々深刻なトラブルに発展する可能性がありますので、これを回避できるようポイントを押さえて作成に取り組むことが大事です。
作成前の確認事項
遺産分割協議を行う前に、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集め、相続人を漏れなく特定していく必要があります。同時に、被相続人のすべての財産を調査し、預貯金、不動産、有価証券だけでなく、借金などのマイナス財産も含めて正確に把握するよう努めてください。
これらの確認が確実にできていないと、適切な形で遺産分割協議書が作成できたとしてもトラブルは避けられません。
遺産分割協議書作成のポイント
遺産分割協議書を作成するときは「相続人全員の合意」が証明できるように、全員の署名と押印を行うようにしましょう。住所・氏名は、住民票や印鑑登録証明書の通りに正確に記載し、確実に誰が当該文書の内容で合意したのかを示せるようにします。
こうすることで遺産分割協議書に高い証拠力を持たせることができ、万が一相続人やその他利害関係者が「その遺産分割は無効だ」などと主張して訴訟にまで発展したとしても、相手方の意見を覆しやすくなります。
また、トラブルの回避、リスク低減の観点からは「紛争解決条項」や「後日遺産が見つかったときの取り扱い方法」を定めておくことも有効です。
- 紛争解決条項について
→ “紛争が生じた場合は○○裁判所を第一審の専属的合意管轄とする”などと定め、スムーズな裁判手続きとなるよう備える。 - 後日遺産が見つかったときの取り扱い方法について
→ “相続開始後○年以内に発見された財産は、法定相続分に従い分配する”などと定め、再度協議を行う手間を省くことも可能。
財産は特定できるように記載すべき
遺産分割協議書では、相続財産を正確に特定してください。
不動産であれば登記簿謄本の情報を反映させ、地番も「XX番」ではなく「XX番1」のように枝番まで記載しましょう。特に、被相続人が複数の不動産を近隣に所有していたときは混同が起こらないよう注意しなくてはなりません。
金融資産に関しても、たとえば預貯金なら「金融機関名」「支店名」に加え店舗コードまで併記しておくとわかりやすいですし誤認も防止できます。株式等の有価証券に関しては銘柄コードと証券会社の口座番号を併記しましょう。
そのほか、デジタル資産(仮想通貨やNFTなど)や知的財産権(特許権や著作権など)、債務(住宅ローンの残債や保証債務など)なども存在するときは確実に特定できるだけの情報を記すようにしてください。