遺留分の割合や具体的な金額|相続人が確保できる遺産の一定割合とは
亡くなった方の配偶者や子、親など一定の相続人には「遺留分」が法的に認められます。これは相続人が確保できる遺産の一定割合を指しており、遺言により取り分がほとんどなくなってしまった場合でも遺留分については請求により確保することが可能です。
ここではその遺留分がどの程度の金額になるのか、という点に言及します。
遺留分として確保できる割合
遺留分は、最大で遺産全体の「1/2」、相続人が被相続人の両親・祖父母のみであるときは「1/3」となります。そしてその割合を法定相続分に従い分割して、各人個別の遺留分割合を算出します。
もし相続人が配偶者のみであれば遺産の1/2を1人で、相続人が母のみであれば遺産の1/3を1人で請求する権利を持ちます。一方で、共同相続となる場合の個別の遺留分割合は次のような関係になります。
相続人の組み合わせ例 |
遺産に対する遺留分の割合 |
個別の遺留分割合 |
---|---|---|
妻と子(長男のみ) |
1/2 |
妻:1/4(=1/2×1/2) 長男:1/4(=1/2×1/2) |
夫と子(長女と長男) |
1/2 |
妻:1/4(=1/2×1/2) 長女:1/8(=1/2×1/4) 長男:1/8(=1/2×1/4) |
妻と直系尊属(両親) |
1/2 |
妻:1/3(=1/2×2/3) 父:1/12(=1/2×1/6) 母:1/12(=1/2×1/6) |
直系尊属(両親) |
1/3 |
父:1/6(=1/3×1/2) 母:1/6(=1/3×1/2) |
妻と兄弟姉妹 |
1/2 |
妻:1/2 兄弟姉妹:0 |
※被相続人の兄弟姉妹については遺留分が認められない。
遺留分の金額の計算方法
遺留分の金額は、各自の遺留分割合を遺産総額に乗じて算出します。
ただし厳密に請求額を計算するときはいくつか注意しないといけないことがあります。
1つは「遺産総額」の計算方法です。純粋な遺産のほかに、被相続人からの贈与財産※のうち一定のものを含めなければなりません。
- 相続人が受けた贈与に関しては、それが贈与者の経済状況などからみて特に大きな意味を持つようなもの(特別受益)であって10年以内に行われたものが該当する。
- 相続人以外が受けた贈与に関しては、1年以内に行われたものが該当する。
例)相続財産5,000万円、相続人は被相続人の子A・Bの2人とする。Aが5年前に500万円、Bが15年前に1,000万円の贈与を受け、友人Cが半年前に100万円の贈与を受けていた場合
・・・算定の基礎となる遺産総額は5,600万円
もう1つ注意すべき点が「遺留分侵害額」の計算方法です。これは請求額にあたり、まずは個別の遺留分を調べ、その請求者が受けた利益分を差し引いて算出します。ここでも過去に受けた贈与財産※を考慮しなくてはなりません。
- 計算の対象となる贈与に期間の制限はなく、10年より前に受けた贈与も控除する。
- 遺贈を受けている場合も控除し、反対に債務を相続しているならその分加算する。
例)上の例において、遺産のうち4,000万円が友人Cに遺贈されていたとする。AとBは法定相続分に従い残りの遺産をそれぞれ500万円ずつ取得した場合
・・・AおよびBの遺留分は1,250万円(=5,000万円×1/2×1/2)
・・・Aの遺留分侵害額は250万円(=1,250万円-500万円-500万円(生前贈与の分))
・・・Bの遺留分侵害額は0円(15年前に1,000万円の贈与を受けており、相続分と合わせると遺留分に達するため)
遺留分の請求方法
遺留分を確保するには、遺留分侵害の原因となった行為の相手方に対して、金銭の支払いを求める必要があります。上の例でいうと、受遺者である友人Cに対して遺留分侵害額を支払うよう請求します。
請求方法に決まりはなく、役所を介して行う必要もありません。ただ、今後金銭のやり取りをめぐってトラブルになる可能性があるため、請求した事実を証明できるよう書面等の形で記録が残るように請求すべきです。